日本救急医学会雑誌
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ワーファリン内服中の腹膜炎緊急手術時に乾燥人血液凝固第IX因子複合体を術前投与した2例
小鹿 雅博佐藤 信博鈴木 泰吉田 雄樹井上 義博若林 剛遠藤 重厚
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2005 年 16 巻 10 号 p. 581-586

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抄録

ワーファリン内服中の腹膜炎患者に対し乾燥人血液凝固第IX因子複合体(prothrombin complex concentrates; PCC)を用いた緊急手術を2例経験した。症例1は80歳,男性。大動脈弁形成術,人工血管置換術後よりワーファリン2mg/day内服中,穿孔性虫垂炎,腹腔内膿瘍の診断にて手術施行。術前プロトロンビン時間(PT)-International Normalised Ratio (INR) 4.69,トロンボテスト5%以下だった。症例2は89歳,女性。心房細動のためワーファリン1.5mg/day内服中,絞扼性イレウスの診断にて手術施行。術前PT (INR) 2.73,トロンボテスト5.2%だった。術前にPCC 500E投与,投与15分後の凝固能検査においてPT (INR),トロンボテストの著明な短縮が認められた。2例とも出血傾向,出血性合併症なく周術期を経過した。ワーファリン投与中患者の緊急手術に対するPCCの使用はわが国の保険制度では適応外であるが,今回有用性が示された。今後の適応拡大について検討する必要があると思われた。

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