日本救急医学会雑誌
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覚醒モルモットのlipopolysaccharide誘発腸管麻痺に対するsivelestat sodium hydrateの抑制効果
加地 正人根本 香代久保田 稔二宮 宣文片山 博徳前田 昭太郎山本 保博
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2006 年 17 巻 12 号 p. 845-853

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抄録

好中球エラスターゼ阻害剤であるsivelestat sodium hydrate (sivelestat)は,全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害の治療薬として用いられているが,腸に対する影響は未だ明らかではない。われわれは,既に報告したLPS誘発腸管麻痺モデル動物を用いて,sivelestatの腸管に対する効果を検討した。モルモットの腸管運動と体温を経時的に測定した。腸管運動は,結腸紐に取り付けた圧トランスデューサーを介したテレメトリー法で観察した。体温は頚背部皮膚に装着したプレートタイプ温度計で腸管運動と同時に測定した。腸管運動が安定した術後4日目で,lipopolysaccharide (LPS, E. coli, O111: B4)をモルモットの腹腔内に投与した。SivelestatをLPS投与10分前および1時間後に腹腔内投与したモルモットでは,LPS投与後2時間での腸管弛緩作用および体温低下作用はsivelestat濃度依存性に抑制されていた。モルモット血漿中エラスターゼ活性は,LPS投与2時間後に有意に増加し,この増加はsivelestat投与により有意に抑制された。病理組織学的検討から,今回使用したLPS濃度では,投与後2時間において結腸紐への好中球集積は認められなかった。以上の結果から,LPS投与により惹起した全身性炎症反応症候群における腸管機能障害に対して,好中球エラスターゼ阻害剤のsivelestatは有効である可能性が示唆された。

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