日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
外傷患者における血中ウリナスタチン値測定の臨床的意義
稲垣 伸洋石川 雅健曽我 幸弘中川 隆雄鈴木 忠
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 17 巻 2 号 p. 39-44

詳細
抄録

体内でのウリナスタチン(以下UTI)産生が生体侵襲時に増加することは知られている。そして侵襲の大きさと尿中UTIはよく相関するといわれている。そしてUTIは血中より尿中へ排泄されると考えられている。敗血症患者において,血中UTI値が不全臓器数を反映し敗血症時の重症度の指標と成り得るとの報告がある。今回我々は外傷患者の血中UTI値を経時的に測定し,外傷の侵襲の程度や他の炎症のパラメーターとの関係をみることで,外傷患者における血中UTI測定の有用性を検討した。既往症がなく,治療に外因性UTIを使用してない外傷患者17名を対象とし,ISS 25以上と未満の2群に分け,それぞれ48時間以内にSOFAスコアの改善した群と増悪した群に分けた。ISS 25以上で48時間以内にSOFAスコアの増悪した例は6例(A群),改善した例は5例(B群),ISS 25未満で48時間以内にSOFAスコアの改善した例は6例(C群),増悪した例はなかった。死亡率はA群で33%, B群で0%, C群で0%であった。血中UTI値は入院時,第1病日,第3病日,第5病日,第7病日に測定し,各群でその動向をそれぞれ検討した。入院時ISSでは各群間に血中UTI値の有意差は認めず,UTIは受傷時の解剖学的重症度は反映しなかった。A群で血中UTI値が上昇する傾向がみられ,他の2群と比しても有意に高かった。A群は解剖学的にも生理学的にも重症であり,持続的な侵襲が加わっていたものと考えられる。またと他のパラメーターとの関係はSOFAスコア(R=0.493, p<0.0001), CRP (R=0.388, p=0.0013), IL-6 (R=0.26, p=0.036)と,それぞれ正の相関関係を認めた。このように血中UTIの推移は生理学的重症度とよく相関した。外傷患者の血中UTI値の経時的上昇は外傷後の経過における多臓器不全発症の指標となり,その重症度,治療効果,予後を反映し変動する可能性が示唆された。

著者関連情報
© 日本救急医学会
次の記事
feedback
Top