日本救急医学会雑誌
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救急外来における高齢者腹痛の診断
岡田 見布江佐藤 守仁木村 昭夫岡田 一宏糟谷 周吾井上 雅人御川 安仁
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2006 年 17 巻 2 号 p. 45-52

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抄録

目的:高齢者腹痛症例の救急外来における診断とその正診率,緊急手術の予測因子について検討する。方法:2年間に救急搬送された65歳以上の腹痛患者を対象とし,後ろ向きに病歴を調査した。結果:189例が対象となった。初診時の正診率は79%であり,13例(7.1%)において,初診時診断と最終診断が大きく相違していた。開腹遅延例は6例で,入院と判断されたうちの6.3%であった。緊急手術を要した群と非手術群との比較では,単変量解析にて,頻呼吸,低体温,持続痛,発汗あり,高血糖,低アルブミン血症,低カルシウム血症,systemic inflammatory response syndromeの割合が緊急手術群に有意に多かったが,ロジスティック回帰分析では,持続痛のみが有意な予測因子であった。開腹遅延となった6例すべてにおいて,腹部CT検査が診断の鍵となっていた。結論:高齢者における腹痛は,所見に乏しく正診率は低い。持続痛は緊急手術の予測因子であると考えられ,持続痛を呈する例では,早期の腹部CTによる検索が開腹遅延回避に有用であると考えられた。

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