日本救急医学会雑誌
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スズメバチ刺傷により多臓器不全にて死亡した1例
岩村 高志北原 雅徳中島 厚士大串 和久平原 健司瀧 健治山元 章生
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2006 年 17 巻 2 号 p. 67-73

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抄録

われわれは,スズメバチに多数箇所を刺され多臓器不全により死亡した1例を報告する。80歳の男性が,畑でスズメバチの群れに襲われ,全身78箇所を刺されて約1時間後に搬送されてきた。来院時,ショック状態であったが,輸液付加及びエピネフリン0.1mgの静脈内投与により循環動態は速やかに安定した。しかし,受傷時の血液検査にて,すでに肝機能異常・横紋筋融解・凝固異常等を認めた。輸液・新鮮凍結血漿(FFP)投与・ステロイド投与等にて対応したが,血液検査及び全身状態の増悪を認めたため,人工呼吸器管理の上,受傷約13時間で血漿交換・持続血液濾過透析を開始した。しかし,受傷51時間後,多臓器不全にて死亡した。わが国の文献報告においては,スズメバチによる多数箇所刺傷例もしくは臓器不全例は25例あり,このうち8例の死亡が報告されている。これらはアナフィラキシーではなくハチ毒による臓器障害例で,死亡例のほとんどは50箇所以上の刺傷数を持つ例であることがわかった。50箇所以上の刺傷数もしくは全身状態が悪いと判断される場合,迅速に血漿交換(PE)を施行し,その後継続してCH(D)Fを施行すべきである。

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