日本救急医学会雑誌
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各種重症病態における凝固線溶異常の検討
とくにTAT, PICとの関連において
赤堀 道也石倉 宏恭谷口 智行北澤 康秀武山 直志田中 孝也
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キーワード: TAT, PIC, 凝固, 線溶, DIC
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1992 年 3 巻 6 号 p. 428-436

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抄録

各種疾患によりその凝固線溶異常病態は異なる。今回代表的な疾患別にとくにthrombinantithrombin III complex(以下TATと略す),plasmin-alpha 2-antiplasmin complex(以下PICと略す)について,その他の凝血学的検査値として血小板,prothrombin time(以下PTと略す),antithrombin III(以下AT IIIと略す),alpha 2-plasmin inhibitor(以下α2-PIと略す),プラスミノーゲン,フィブリノーゲン,fibrin/fibrinogen degradation products E monomer(以下FDP-Eと略す),D-dimerを経日的に測定し各検査値間および重症度指数のAPACHE II scoreとの相関関係,それぞれの病態での特徴,差異について検討を行った。症例はmultiple organ failure(以下MOFと略す)7例,肝不全(重症型)8例,劇症肝炎6例,敗血症14例,血栓症6例,動脈瘤破裂6例,産科疾患3例,熱傷7例,外傷27例,acute promyelocytic leukemia(以下APLと略す)2例,その他28例の114症例で,disseminated intravascular coagulation(以下DICと略す)の合併は38症例に認めた。相関の検討では,TATとD-dimer以外は有意な相関はなく,また重症度指数のAPACHE II scoreとTAT, PICの間にも相関は認められなかった。各種疾患でのTAT, PICの平均値はそれぞれMOF 11.0ug/l, 0.8ug/ml,肝不全11.5, 3.1,劇症肝炎26.6, 6.3,敗血症15.0, 1.6,血栓症25.3, 7.1,動脈瘤破裂29.3, 2.6,産科疾患43.1, 5.7,熱傷23.8, 1.3,外傷36.0, 2.7, APL 162.9, 10.9,その他13.6, 1.8であり,DICの合併にかかわらず各種疾患において5型の凝固線溶異常状態に分類しえた。各種重症疾患では,すでに異なったさまざまな凝固線溶異常状態が存在しており,一つの包括したカテゴリーの凝固線溶異常としてDICをとらえるのではなく,各種疾患での凝固線溶異常病態の延長上にDICを位置づけ,病態の把握をしていくことが重要と考えられた。

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