日本救急医学会雑誌
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破裂脳動脈瘤症例におけるminor leakageの検討
本多 満串田 剛静 正則柴田 家門寺尾 榮夫斉藤 徹上嶋 権兵衛
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1994 年 5 巻 7 号 p. 673-680

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抄録

当院救命救急センターおよび脳神経外科にて1986年より1990年の過去5年間に経験した,破裂脳動脈瘤によると思われるクモ膜下出血症例215例中,明らかにminor leakageによると思われるwarning signを有した症例は47例(21.9%)を占めた。この47例について,医療機関の受診の有無,再出血発作の時期,来院時のHunt & Kosnikのgrading,手術施行率,転帰等についてminor leakageのない168例と比較検討を行った。医療機関を受診した症例は28例(59.6%)と6割を占めた。再出血発作の時期については72時間以内が24例(51.1%),2週間以内が44例(93.6%)と早期に再破裂が多かった。来院時の重症度は,minor leakageを認めた症例群においてHunt & Kosnikのgrade I, IIは19.1% (9例)と,minor leakageを有さない症例群の35.8% (60例)に比較して重症例が多かった。このため手術施行率は42.5% (20例)と低く,転帰に関してもminor leakageを有さない症例群に比較して悪い。本来,minor leakageの時点で診断がつけばHunt & Kosnikのgrade I, IIであり,これらの症例はよい状態で治療を開始することができる。このことより,一般の人やprimary careに携わる医師に,minor leakageの存在およびその重要性を啓蒙することにより,破裂脳動脈瘤によると思われるクモ膜下出血症例に対する治療成績の向上がみられると思われる。

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