日本救急医学会雑誌
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日本の「ディーオーエー」の治療成績はなぜ悪いのか?
瀧野 昌也藤野 和浩岡田 芳明
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1995 年 6 巻 6 号 p. 653-661

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抄録

背景と目的:日本の「DOA」の治療成績は,bystander CPRの施行率の低さや病院到着前救急体制の立ち遅れのために,外国に比べて悪いといわれる。著者らは,それら以外にも内外の成績差を生じる原因があると考え,それを検証するために文献的研究を行った。対象と方法:1983年から1991年までに発表された院外心肺機能停止(OHCPA)または来院時心肺機能停止(CPAOA)に関する文献のうち,十分な症例数と情報のある国内14,外国23の論文を対象とし,bystander CPRの有無と病院到着前救急体制以外の予後因子,および生存退院に関する情報について国内外で比較した。治療成績の指標は生存退院率とした。結果:日本の文献では主にCPAOAを,外国ではOHCPAを扱っていた。原因疾患では,日本ではすべての疾患を含め,外国では大半で心疾患に限定していた。年齢は日本で若く,目撃者のある割合や,来院時の心室細動の割合に差はなかった。平均生存退院率は,日本のOHCPAで4%,CPAOAで3%,外国でそれぞれ9%と1%であった。外国ではOHCPA後に生存退院した例の93%は来院時に心拍が再開していた。日本では心疾患による心肺機能停止の生存退院率は6%であった。考察:CPAOAは,OHCPAから,その生存退院の大半を占める来院時に心拍が再開していた例を除いたものにほぼ相当する。ゆえに,CPAOAの生存退院率がOHCPAより悪いのは当然である。また,日本では予後のとくに悪い鈍的外傷や脳血管障害などをも対象としているので,心疾患が大部分を占める外国よりも,治療成績は悪い方に偏る。年齢の差は原因疾患の違いで説明できるが,治療成績の差の原因とは考えにくい。結論:日本の「DOA」の治療成績が,外国の急性心肺機能停止の治療成績よりも悪いのは,来院時心肺機能停止を対象とし,原因疾患を限定していないことにも一因がある。

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