日本救急医学会雑誌
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解糖系およびTCA cycleからみた敗血症症例の細胞内代謝の検討
最所 純平
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1996 年 7 巻 5 号 p. 223-236

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抄録

敗血症における重症度別の細胞内代謝障害を解糖系,TCA cycleから検討した。対象は敗血症症例で,種々の治療で一元的に感染巣が取り除かれ,ほぼ24時間以内に循環動態が改善した29症例を用いた。搬入時のshock scoreによって4点以下のA群8例,5~7点までのB群15例,8~11点までのC群6例の3群に分けて比較した。方法は集中治療を行いながらshock score,血液ガス,血清pyruvate, lactate, citrate, succinate, malate, arterial ketone body ratio (AKBR)の測定を搬入時,3時間後,6時間後,12時間後,24時間後,48時間後,96時間後の計7回行った。shock scoreは,ほぼ24時間で全群で正常域に改善した。pyruvate, lactateは,B群で48時間後に正常化したがC群は96時間後もpyruvate; 1.28±0.32mg/dl, lactate; 30.1±7.6mg/dlと高値を示し続けた。citrateは,搬入時からC群が比較的高値を示し96時間後は正常上限となった。succinateは,3群とも正常域ながらとくにC群で有意に高値を持続した。malateは,A群B群で2μg/ml以下の正常域を推移したが,C群では有意に高値を示し続けた。AKBRは,A群B群で24時間後と比較して96時間後に有意に改善したがC群は改善が認められなかった。B群C群における,解糖系代謝物とTCA cycle内の中間代謝物との関係は,搬入時から12時間までは相関関係は認められなかったことから,嫌気性解糖は進行しつつもTCA cycleの回転はまだ強く障害されていないと考えられた。また24時間以降,徐々に解糖系代謝物とTCA cycle内の中間代謝物に相関が認められたことから,とくにC群ではsuccinate dehydrogenase, malate dehydrogenase, isocitrate dehydrogenaseの活性低下によるTCA cycleの代謝障害が示唆された。細胞内代謝は循環動態が改善した後においても,とくに重症敗血症性ショック群で障害が遷延したと考えられたため,cellular supportは少なくとも5日間程度必要であることが示唆された。

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