日本救急医学会雑誌
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成人気管支喘息患者の発作期における経口徐放性theophylline製剤の体内動態の検討
中原 保裕村田 正弘鈴木 健大津 文雄長澤 絋一
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1997 年 8 巻 2 号 p. 43-50

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抄録

経口徐放性theophylline製剤(テオロング®)の気管支喘息発作期における体内動態の変動について検討した。外来にて経口徐放性theophylline製剤を服用していたにもかかわらず気管支喘息発作のため入院となった患者10例(男4例,女6例)を対象とした。入院後同一患者の発作期並びに寛解期に血清中theophylline濃度測定を実施しベイジアン法を用いて両期における体内動態パラメータを算出し比較した。Theophylline血清中濃度は発作期14.4±0.7μg/ml,寛解期18.1±3.2μg/mlであり,発作期の血清中濃度は低下していた。Theophyllineの全身クリアランスは発作期0.044±0.0151/kg/hr,寛解期0.037±0.0181/kg/hrと発作期のクリアランスが亢進していた。分布容積は発作期0.429±0.0241/kg,寛解期0.399±0.0461/kgであり,発作期の分布容積は増大していた。また分布容積と動脈血pH値との間にはr=-0.65の有意の相関が示された。TheophyllineはpH依存性にタンパク結合をすることから,動脈血pH値の変動によりタンパク結合率が影響を受けたために分布容積の増大が生じた可能性が示唆された。吸収ラグタイムは両期とも有意な差は認められなかった。発作期から寛解期に移行する中でtheophyllineの体内動態は変化し,血清中濃度値に影響を及ぼし副作用発現が生じやすくなるので,血清中濃度をモニターしながら必要に応じて投与量の変更を行うことの重要性が示された。

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