日本救急医学会雑誌
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都立広尾病院と東京都の島嶼のテレメディカルネットワーク
光定 誠上木 雅人坪田 邦男服部 博之小林 剛関口 令安
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1997 年 8 巻 3 号 p. 119-126

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抄録

1994年10月より都立広尾病院と東京都の全島嶼の医療機関11ヵ所の間に救急医療に主眼をおいた24時間体制でのテレメディカルネットワークが形成され稼働している。約1年8ヵ月の間に200症例834画像の伝送とコンサルテーションが行われ,これらについて検討した。伝送が行われた地域について検討すると,中小規模の離島からの伝送が多く,大規模離島からは少なかった。これには伝送を行う医師と受ける医師との間の人間関係(doctor-doctor relationship; DDR)が関連していると考えられ,このようなネットワークを考えるうえでの重要性が示唆された。疾患別,モダリティー別では整形外科疾患,骨X線写真が多く伝送された。CT,胸部単純X線写真,実写カラー画像も多く伝送されたが,伝送画像における診断名特定率を検討すると骨X線写真,CTでは92.7%, 93.6%と高値を示したが,胸部単純X線写真では43.8%,実写カラー画像では56.3%と低かった。伝送目的を検討すると診断に主眼をおいたものは37%で治療方針についてのコンサルテーションが63%を占めた。緊急性について検討すると160症例(80%)になんらかの緊急性を認めた。25症例(12.5%)は緊急航空搬送されたが,伝送とコンサルテーションにより緊急航空搬送を回避できた症例も認められた。このネットワークシステムは搬送適応の適正化に加えて,搬送決定の補助,収容病院における画像情報による患者受け入れ体制の強化などにも有用であると考えられた。

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