日本救急医学会雑誌
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リポソームカプセル化ヘモグロビンの出血性ショックに対する効果
薄場 彰星野 智祥大須賀 文彦木村 隆佐藤 領藤田 康喜山下 方俊
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1998 年 9 巻 4 号 p. 134-142

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抄録

カプセル化ヘモグロビン(neo red cell; NRC)は粘度が赤血球の1/3と低く,酸素運搬容量が約2倍と高く,単に酸素運搬体として赤血球の代替物にとどまらず新しいresuscitation fluidとして期待される。今回,出血性ショックに対するNRCの効果を検討する目的で,とくに心拍出量が減少した重症ショックモデルを作製し,NRCの特徴である低い粘度と高い酸素運搬容量が循環と酸素供給の改善にどう貢献するか。また併存する赤血球とどう異なるか。さらに心拍出量の減少のない軽症モデルではNRCの効果がどう変化するかについて検討した。雑種成犬13頭を用い,静脈内麻酔後気管内挿管し50%の濃度の酸素を吸入させた。靜脈より脱血しショック状態とし,直ちにNRCを血圧が前値へ戻るまで投与し,これを3回繰り返した軽症モデル6頭を1群とし,同様にショック状態とし,そのまま30分間治療せずに放置した後にNRCを血圧が前値へ戻るまで投与し,これを3回繰り返した重症モデル7頭を2群とした。脱血前および各NRC投与後に循環動態と酸素動態を検討した。1群では脱血量と等量のNRC投与で血圧が回復し,しかもNRCの低粘度効果で血管抵抗が減少し,心拍出量が増加した。一方2群では脱血量の1.6倍のNRC投与を要し,しかも血管抵抗が増加し,心拍出量が減少した。すなわち2群では血管内血漿のextravasationのため血管抵抗が増加し,低粘度のNRC投与でも循環改善が得られず心拍出量が減少した。さらに2群では酸素需要が著増した。そこでNRCは動静脈血酸素含量較差(AV較差)を増加させ,心拍出量の減少分を酸素運搬容量増加分で補填した。しかし,併存する赤血球ではNRCのような強力な酸素運搬増強効果はみられなかった。一方,1群では侵襲軽度で酸素需要は増加せず,しかもNRCの低粘度効果で心拍出量が増加したのでNRCのAV較差は増加しなかった。以上よりNRCは心拍出量減少のない軽症ショックは無論,心拍出量が減少し,しかも粘度の低下でも心拍出量増加が得られない重症ショックでも酸素需要の増加に対応できる優れた性能を示した。

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