日本救急医学会雑誌
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多発外傷を伴った頭部外傷の検討
本間 正人横田 裕行小林 士郎山本 保博大塚 敏文
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1998 年 9 巻 5 号 p. 182-190

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抄録

頭部外傷を伴った多発外傷患者のpriority,多発外傷の頭部外傷に与える影響,外科的治療の治療戦略について検討した。日本医科大学救急医学科関連施設の全入院患者22,828人のうち外傷患者は8,085人(35%),頭部を含む外傷患者は3,536人(16%),頭部を含む多発外傷は1,280人(6%)であった。なお多発外傷を伴う頭部外傷とは,頭部外傷のほかにAISが3以上の他部位の損傷を有する外傷である。1,280例の転帰として来院時心肺停止263例を除くと,救命は708例(70%),死亡は309例(30%)であった。緊急手術を要した患者220名の初診時の意識レベル(GCS),収縮期血圧(sBP)と手術部位を検討すると,GCS>8, sBP≦90mmHg (subset II)では頭部手術を要したのはわずか2%であり,GCS≦8, sBP>90mmHg (subset III)では頭部手術が91%必要となっていた。GCS≦8, sBP≦90mmHg (subset IV)では胸腹部手術が58%,頭部手術が33%であった。多発外傷を伴う頭部外傷と頭部単独外傷患者808名を比較検討すると,解剖学的重症度(ISS),生理学的重症度(RTS),輸血単位数,最低血小板数において多発外傷を伴う頭部外傷は有意に重症であったが,頭部AISが3以下の症例では多発外傷群で有意に転帰が不良であるが,頭部外傷が重症になるほど(頭部AIS≧4, CT分類(TCDB) D-III, IV,頭部手術が施行症例)多発外傷の影響は小さくなる傾向があった。多発外傷を伴った頭部外傷に対する治療戦略はearly definitive surgery, early ICP monitoringである。緊急開頭術が施行された211名の検討では,開頭血腫除去術の生存率(54%)に比べ穿頭血腫吸引術の生存率(17%)は不良であった。非占拠性病変に対し頭蓋内圧測定を64例に施行した。頭蓋内圧上昇により開頭血腫除去術を要した9例のうち8例(89%)は生存しており,頭蓋内病変の早期発見により予後改善が期待できる。多部位同時手術が43例に施行されており生存率は44%であり,優先すべき損傷が同時に複数存在する場合は有効である可能性がある。われわれの治療法の有効性を証明するためには,さらなるcontrol studyが不可欠である。

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