日本乳癌検診学会誌
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ハイリスク女性に対する検診をどうするか
ハイリスク因子
遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の拾い上げ
矢形 寛 山内 英子角田 博子
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電子付録

2015 年 24 巻 2 号 p. 229-234

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抄録

遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)の拾い上げには,医療者がその重要性を認識し,患者に対して適切に情報を提供できる体制作りが不可欠である。聖路加国際病院では,本邦における多施設共同試験の結果に基づき,2006年より遺伝診療部を立ち上げ,遺伝カウンセリングから予防戦略までの流れを確立してきた。その上で,乳腺科にてNCCN ガイドラインの検査基準に適合する乳癌患者に対し,遺伝カウンセリングにつなげる努力をしている。できるだけ適切に拾い出しを行うため,オリジナルの問診票を作成して,詳細な家族歴を限られた時間で有効に収集し,患者に手渡す乳癌診療のための説明書にもHBOC に関する内容を盛り込んで,その理解を促す。乳腺科医師には,なぜ遺伝が大切か,それを知ることで何が変わるかについて,要点を簡潔に説明できる医学的知識力を身につける教育を行い,新患患者の情報を皆で共有しながら漏れを防ぐようにしている。さまざまな工夫により,最近では多くの適応患者が遺伝カウンセリングを受けるようになっている。BRCA1/2 遺伝子検査を受けた方のうち,変異が約20%の頻度で同定され,卵巣・卵管,または乳房のリスク低減手術によりoccult cancer も発見されていることから,本邦においてもより積極的な拾い上げを行っていくことが求められる。

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