日本乳癌検診学会誌
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過剰診断について考える
過剰診断の基本概念
濱島 ちさと
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キーワード: がん検診, 不利益, 過剰診断
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電子付録

2016 年 25 巻 3 号 p. 212-218

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抄録

「過剰診断」はマンモグラフィ検診の評価に絡み,乳がん検診では重要な検討課題となっているが,すべてのがん検診に生じる不利益である。「過剰診断」とは,がん検診を行うことで,本来は生命予後には影響しないがんを発見することを意味する。がん検診を受診することがなければ,こうしたがんは発見されない。過剰診断により,不必要な精密検査や治療の増加を招く可能性がある。無症状者を対象とするがん検診では,「過剰診断」の可能性が高く不利益が大きいが,「過剰診断」はすべての医療サービスが共通に抱える問題である。「過剰診断」は検診方法ばかりではなく,対象集団の人種やリスク要因も影響する。また,検査の感度,検診の開始・終了年齢,検診間隔も影響要因となる。 過剰診断の推計にはいくつかの方法があるが,現段階では標準化された方法は定まっていない。地域相関研究,時系列研究,コホート研究などの観察研究や無作為化比較対照試験のデータを用いることができる。この他,モデル評価が行われている。 頻回に検診を行うことで過剰診断が増加し,過剰治療を誘発する。がん検診による過剰診断を可能な限り減少させるためには,検診回数を最小限とすることが望ましい。

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