日本乳癌検診学会誌
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第29回学術総会/パネルディスカッション1
乳癌易罹患性遺伝性腫瘍診療の基本
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を中心に
杉本 健樹
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2020 年 29 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

従来の遺伝性腫瘍診療では癌の診療現場で遺伝リスクの高い患者を拾い上げ,遺伝診療部門で遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を行い,結果に応じた医学管理を行うという流れで行われてきた。しかし,ここ数年,特に遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)を中心に遺伝性腫瘍診療の流れが大きく変わりつつある。2018年7月オラパリブのコンパニオン診断としてのBRCA 遺伝学的検査が保険適用になり,2019年6月に「がんゲノム医療」も保険適用となり,がん遺伝子パネル検査の2次的所見として遺伝性腫瘍が発見される可能性が高まっている。また,遺伝診療部門でも生殖細胞系列の多遺伝子パネル検査が浸透しつつあり,可能性の高い遺伝性腫瘍を絞り込み単一遺伝子の遺伝学的検査を行うのとは違い想定外の遺伝性腫瘍に遭遇する機会も増加が見込まれる。また,HBOC の出口戦略として進行再発乳癌におけるオラパリブの登場に加え,乳癌・卵巣癌既発症者に対するサーベイランスやリスク低減手術の保険収載が予定(2020年4月)されるなど乳癌易罹患性遺伝性腫瘍の診療は急激に環境が変化している。 このような状況変化のなかで,乳癌診療に従事する医療者も遺伝性腫瘍に対する理解を深め,情報提供やコンパニオン診断としての遺伝学的検査の説明など主治医の果たすべき役割も大きくなっている。

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