日本乳癌検診学会誌
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総説
リスク層別化乳がん検診
植松 孝悦
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2021 年 30 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

乳癌発症リスク層別化による乳がん検診は,不利益の少ない対費用効果も優れる乳がん検診になると考えられ,世界各国でトライアルが開始されている。未発症BRCA 遺伝子変異保持者をはじめとする乳癌high risk 群の乳がん検診は,究極のリスク層別化乳がん検診である。40~49歳の日本人女性を対象とした超音波検査併用検診マンモグラフィのランダム化比較試験J―START もリスク層別化乳がん検診の研究と解釈できる。乳癌発症リスクの決定方法として,Gail モデルを代表とする古典的な乳癌発症リスク評価システムにマンモグラムの乳房構成や遺伝子多型情報を組み合わせて判定する方式が世界のトレンドである。日本人女性に欧米の乳癌発症リスク評価システムは使用できないので,乳癌好発年齢(45~49歳)と乳房構成,家族歴の情報を主体として,前向きコホート研究でリスク因子の科学的根拠を集積して決定する必要がある。これまでにリスク層別化乳がん検診の有効性を示す確固たるエビデンスはないが,英国で行われているリスク層別化乳がん検診のトライアル結果は,正確に乳癌発症リスクを判定し,偽陽性や過剰診断などの乳がん検診の不利益を減少させ,利益が確実に上回る乳がん検診となるデータとエビデンスを蓄積しつつある。日本においてもこれからの医療経済や医療効率を考えるとリスク層別化乳がん検診の導入ついて積極的な議論と研究が必要である。

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