抄録
大野城市対策型乳がん検診は集団検診のみであったが,2020年度より葉書による個別通知と近隣医療機関での個別検診という新システムが導入されたので,初年度における当院の検診受診者を対象にその有効性と課題を検討した。
当院における市個別検診受診者を対象とし,受診者数の変化・受診者詳細・検診プロセス指標・発見乳癌・検診から手術施設紹介までの期間を調査した。また,乳がん検診に関する意識調査目的で2021年度検診受診者を対象にアンケートを実施した。
2020年度の40歳無料クーポンを除く市検診全体の受診者は2,191名と前年度の1,656名より大幅に増加した。当院の受診者は398名(全体の18.2%)で,適切な検診間隔の受診者は約半数,自己触診率は38.4%と検診への関心度は低かった。発見乳癌は3名(0.75%)で2名が早期癌であった。要精検率は12.3%,精検受診率95.5%,陽性反応的中度6.8%であった。当院個別検診後に精査受診した乳癌症例における手術施設紹介までの日数は平均31日と,他施設検診後に受診した乳癌症例の平均71.4日と比較し短期間であった。アンケートの受診契機では,9割の受診者が個別通知を選択していた。
市乳がん検診の新システム導入により,検診受診者は大幅に増加した。個別検診施設として初参加した当院では要精検率の高さが課題となったが,乳腺専門外来における個別検診の利点も示された。