本稿は,岩田(1955)のいう「管理中心主義の簿記」とする考え方に立脚して,中小製造業において簿記がどのように利用されているのかを観察することを通じて,管理適合的な記録とはいかなるものかを考察する。その結果,活動の記録,記録の経営意思決定や日常業務への活用を行うといった情報利用者にとって適合的な方法で情報システムを構築し,最終的には会計ソフトへの接合を図っている。よって,「管理中心主義」の視点からは目的適合的な記録作成が行われ,貨幣金額計算の基礎あるいは補助を成していると考えられる。 このことは,帳簿組織を規範的あるいは固定的に考えるのではなく,利用者にとって適合的な情報を作成するために,貨幣金額計算の基礎あるいは補助するための記録を記述するシステムをいかに構築するかが重要であり,記録間の連携をいかに図るか,会計情報が情報利用者の利用目的に適合的であるようにデザインされることの必要性を意味している。