2019 年 2 巻 2 号 p. 21-28
本論文は,為替予約の振当処理とセール・アンド・リースバック取引において出現する前払費用について,従来の前払費用と比較しながら,その性質を明らかにし,前払費用という科目名称を用いることが適当であるか否かを検討することを目的とする。それによると,為替予約とセール・アンド・リースバック取引には,いまだ対価の支払いが行われていないという異質性が明らかとなった。簿記における勘定は,取引事実の顚末記録機能やそれに基づく財産管理機能といった簿記本来の機能から細目性が重視される。したがって,異質性のある項目に従来と同じ前払費用という勘定科目を用いることは,正確さを欠いた処理であり,繰延為替差損や繰延固定資産売却損といった勘定科目を用いることが適当であることを指摘した。