2007 年 34 巻 2 号 p. 75-82
様々な浮遊法の開発により,非平衡状態である過冷融液からの凝固過程の研究が進んでいる.これまで,特に金属や半導体などを対象として,凝固挙動のその場観察がおこなわれ,過冷融液からの結晶成長メカニズムの解明がなされてきた.一方,結晶構造に異方性が強い金属間化合物は,過冷度の増加に伴い,成長機構が変化することが予測されるが,過冷凝固のその場観察は十分でない.凝固組織の制御を目指す上で,金属間化合物融液の過冷凝固過程を詳細に調べる必要がある.本稿では,まず,特に結晶構造の異方性が大きいα-FeSi_2の様々な過冷度からの凝固挙動の特徴を紹介する.そして,凝固組織の解析から,凝固メカニズムのモデルを提案する.