2008 年 34 巻 4 号 p. 194-200
閃亜鉛鉱構造とウルツ鉱構造の安定性について,計算科学の立場からこれまでの研究例を紹介する.具体的には,元素AとBから構成されるA^NB^<8-N>化合物(1≦N≦4の整数: 族番号に対応)を対象として,第一原理計算による両者のエネルギー差,相対的安定性を理解するためのイオン性,原子軌道半径,層間相互作用,原子間相互作用からのアプローチを取り上げる.さらに,それらのアプローチに基づいて閃亜鉛鉱構造とウルツ鉱構造の安定性について議論する.両者の相対的安定性を理解する上では,ボンドの性質と関連する第2近接原子以遠の相互作用が重要である.