日本結晶成長学会誌
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外部電場印加による酸化物高温超伝導体物質の成長ダイナミクスへの影響(<特集>酸化物結晶成長とシンチレータへの応用)
宇田 聡黄 新明
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2008 年 35 巻 2 号 p. 74-80

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抄録

非調和融解性を示すYBCO(123相)の成長において成長システムに電場を印加し,電場による成長ダイナミクスへの影響を論じた.YBCOの包晶反応,211相+溶液→YBCOのプロセスを(1)211溶解,(2)溶質輸送,(3)核形成,(4)成長界面付着キネティクスの4過程に分け,それぞれについて電場の影響を検討した。電場印加により,211相の溶液への溶解に必要な活性化エネルギーは減少し,溶解速度の増加が見られた.また,溶液中に存在する電場は,〜mV/cm程度であるので溶解したイオン性溶質の輸送に対する電場の影響はほとんど見られない.核形成については,静電エネルギーの付加により臨界エネルギーが大きくなり,核形成に必要な過冷却度が増大する.その結果,ある過冷却度におけるYBCOの(100)面の成長速度は,600V/cmの外部電場印加により1/2に減少するように見える.しかし,過冷却度に対する成長速度の変化を表すキネティクス係数は電場の影響を受けない.600V/cmの外部電場印加による実効電場は,成長界面近傍に存在すると考えられる電気二重層内で作用し,その大きさは,10^4-10^5V/cmに達する.

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© 2008 日本結晶成長学会
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