日本結晶成長学会誌
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O/Wエマルション中の油滴の界面不均一結晶化(<特集>ソフトマテリアルと核形成)
有馬 哲史小川 晃弘上野 聡佐藤 清隆
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2010 年 37 巻 1 号 p. 5-14

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抄録

クリームなどに使われている分散状態の水中油型(oil-in-water,O/W)エマルションにおいては,低温における油相粒子の内部の結晶化を制御することが重要な研究課題である.我々は植物油脂を用いたO/Wエマルションにおける油相の界面結晶化と添加剤の効果について,目視観察法,DSC測定法,偏光顕微鏡観察法,放射光X線回折測定法,放射光マイクロビームX線回折法(SR-μ-XRD)などを用いて評価を行った.その結果,エマルション中に疎水性,親水性のショ糖脂肪酸エステルを添加することで,低温でのゲル化に対する安定性の向上,PMFのα型結晶の結晶化温度の上昇,油脂結晶のモルフォルジーの微細化,エマルションの界面付近での油脂結晶の秩序的な配列が確認された.この結果は,添加剤の疎水基部分によりエマルションの界面における不均一結晶核形成が促進され,その結果として,エマルション内部の油脂結晶のモルフォロジーが変化したためと考えられるが,SR-μ-XRDによりエマルション粒子内部の異なる位置における油脂結晶の配向を詳細に観察することで,その仮説を実証した.

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© 2010 日本結晶成長学会
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