日本結晶成長学会誌
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結晶育成時におけるCrイオン種のMg_2SiO_4結晶への取り込みおよび取り込まれたCrイオン種濃度の育成雰囲気中の酸素ガス分圧による変化(<特集>結晶成長を支える高温熱物性計測技術の進展)
山崎 貴史中井 俊一安斎 裕青木 善平
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2010 年 37 巻 2 号 p. 145-153

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抄録

本研究は,Cr添加forsterite(Cr:Mg_2SiO_4)結晶の育成時において,ガス雰囲気中の酸素ガス分圧の変化が結晶中のCrイオン種(Cr^<2+>,C^<3+>,およびCr^<4+>)の濃度分布にどの様な影響を与え,また,各Crイオン種がどの様にして結晶中に取り込まれるかについて明らかにすることを目的として行われた.直径約35mm,長さ約185mmの大きさのCr:Mg_2SiO_4結晶が,Czochralski法(Cz法)により酸素ガス分圧を0.03atm,0atm,0.03atmの順序で不連続的に変えて育成された.また,酸素ガスのみの雰囲気中で育成した結晶中のCrイオン種濃度分布について知見を得るために,Floating Zone法(FZ法)により,直径約5mm,長さ約35mmのCr:Mg_2SiO_4結晶も1atmの酸素ガス圧力の下で育成された.Cz法およびFZ法で育成した結晶(即ち,Cz結晶およびFZ結晶)について組織観察,Cr濃度の分析および光吸収スペクトルの測定を行い,以下に示すような結果を得た.Cz結晶について,酸素ガス分圧を変えることによって結晶組織にはコントラストの変化が生じ,それに対応してCrイオン種の濃度にも変化が現れた.結晶組織のコントラストの変化する方向が成長縞に垂直であることから,各Crイオン種は既に融液中に存在し,結晶育成時にそれぞれのイオン種濃度で固液界面を通して直接に結晶中に取り込まれたものであることが分かった.FZ結晶については,Cr^<2+>イオン種の存在は事実上観察されず,またCr^<3+>イオン種の存在量は僅かであった.一方,Cr^<4+>イオン種の場合は,Cr^<2+>,Cr^<3+>イオン種とは対照的に著しく高い濃度で観察された.

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© 2010 日本結晶成長学会
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