2020 年 10 巻 1 号 p. 22-27
〔要旨〕【背景】腸管損傷を伴わない単独腸間膜損傷は外科的修復術が原則である。一方IVR(interventional radiology)を含めたNOM(non-operative management)も報告されているが,その適応についての一般的な見解はない。【方法】過去5年間で治療介入した単独腸間膜損傷16例を対象として,自験例のCT所見と術中所見を比較検討し,単独腸間膜損傷の治療戦略を検討した。【結果】治療方法は開腹下修復術が8例,鏡視下修復術が7例(3例が開腹移行),IVRが1例であった。CT所見と術中所見とを比較すると,①出血様式,②腸管虚血の合併,③損傷部の範囲と程度,についての読影は困難であり,単独腸間膜損傷では術前CT検査と実際の術中所見との間に乖離が多かった。【結論】単独腸間膜損傷の治療原則は開腹術であり,十分な観察が必要である。腹腔鏡手術では虚血の範囲を誤認するリスクがあり,IVRも止血不十分となるリスクがあるため,慎重な適応が求められる。