2020 年 10 巻 1 号 p. 44-47
〔要旨〕複数回の手術歴や腹膜透析などにより癒着・炎症性被膜を腸管に生じ,腸閉塞をきたす症候群を被囊性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis;EPS)という。山口県立総合医療センターにて小腸切除吻合を要した症例22 例中,腸管内容漏出をきたした3例ともが被囊性腹膜硬化症を背景にもつものであり,1例で小腸縫合不全,1例で小腸損傷,1例で双方合併による腸管内容漏出をきたした。すべてドレナージによる保存的治療で治癒を得た。被囊性腹膜硬化症における小腸切除吻合は,文献的にも縫合不全・腸管損傷のリスクが高く,癒着剝離を最小限に抑えることが肝要である。術後の腸管内容漏出に対しては保存的治療が有効であり,術中にはそれを念頭に置いたドレナージチューブの留置が推奨されるべきと考える。