日本応用動物昆虫学会誌
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原著
フタスジヒメハムシ飛翔成虫の発生動態と卵巣発育状態
加進 丈二
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2011 年 55 巻 4 号 p. 207-215

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抄録

フタスジヒメハムシの飛翔の実態を明らかにするため,ダイズほ場における成虫の発生動態と卵巣発育状態について調査した.前年ダイズを作付したほ場において4月~5月にかけてダイズ苗をトラップとして設置し,越冬後成虫が地上に出現する時期を調査した.越冬後成虫は,通常ダイズが発芽期を迎える約1か月前の4月下旬~5月上旬に地上へ出現することが確認された.ダイズ栽培ほ場における飛翔成虫の発生動態を調べるため,粘着トラップと見取り法および払い落とし法を用いて成虫数の変動を調査し,合わせて卵巣発育との関係を調べた.粘着トラップでは越冬後成虫,第1世代および第2世代のいずれの発生時期でも成虫が捕獲されたが,第1世代の捕獲成虫数は越冬後成虫および第2世代と比較して明らかに少なかった.越冬後成虫では,ダイズから採集した個体の多くが成熟卵を保有していたが,粘着トラップで捕獲した飛翔個体の卵巣は未成熟であった.第1世代では,飛翔個体およびダイズから採集した個体のいずれも卵巣の発育が認められた.第2世代では,飛翔個体およびダイズから採集した全ての個体が未成熟であった.粘着トラップで捕獲した成虫とダイズ上から採集した成虫では性比に有意な差は認められず,成虫の飛翔行動は雌雄で同様に起こると考えられた.これらのことから,フタスジヒメハムシの成虫は卵巣が未成熟の段階で飛翔活動性が高く,主に越冬後成虫と第2世代が飛翔移動に関与することが示唆された.

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© 2011 日本応用動物昆虫学会
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