日本応用動物昆虫学会誌
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ダイズシストセンチュウ卵の前処理と根浸出液のふ化促進効果の関係
岡田 利承
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1971 年 15 巻 4 号 p. 215-221

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抄録

1) ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines ICHINOHE)の卵(5°Cの湿った土壤中のシストから得た)を,インゲンの根の浸出液につけてふ化を促進する場合に,この卵をすぐ根の浸出液につけるよりも,まず温水に入れておいてから,根の浸出液に移す方がふ化率は高くなることがわかった。卵を温水につけないか,つけても短期間の場合は,根の浸出液に入れたあとのふ化率の高まりは遅く,最終的なふ化率も低かった。
2) 前もってつけた水と,根の浸出液の浸漬温度をともに25°Cとした場合は,水につける期間が1∼4週間の時にふ化率が最も高くなった。また水につける期間を2週間とした場合は,その時の温度を25°Cか30°Cとすると,ふ化率を最も高くすることができた。前もって水につける処理の温度と期間の関係は,一般に温度が低ければ長期間の浸漬を必要とし,温度が高ければ短期間の浸漬でよかった。ただし35°Cの水につけた後では,25°Cの浸出液に入れてもふ化率は高くならなかった。
3) 根の浸出液は25°Cの時に,その前の処理条件にかかわらず,ふ化率は最も高くなった。以上から,ふ化率を高めるための処理条件は卵をまず25°Cか30°Cの水に1∼2週間つけた後,25°Cの根の浸出液に移すのが最もよいと考えられる。
4) ただし,前もって25°Cの水に卵をつけた場合には,30°Cの水につけた場合よりも,水中でふ化してしまう割合が高く,そのため浸出液に移してから後のふ化率は逆に少なくなった。根の浸出液に入れてから短期間にふ化率を高める目的の場合は,水の浸漬温度を30°Cとするほうがよいと思われる。この場合の浸漬期間は1週間で十分であると考えられる。

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