1977 年 21 巻 1 号 p. 27-34
ハダニの吐糸した糸を観察する方法および吐糸量の測定法を考案し,それを用いて吐糸と歩行活動の関係を2種のハダニ,ナミハダニTetranychus urticae KOCHとミカンハダニPanonychus citri (MCGREGOR)について検討し,併せて,地面を向いた葉面におけるハダニの行動を記録した。
1) ハダニはポリエチレン膜面ではほとんど歩行を続け,その歩行速度はナミハダニで1.82m/hr,ミカンハダニで1.43m/hrであった。また,葉の裏面では停止時間(主として摂食時間)がかなり長くなり,歩行速度はレッドクローバの裏面でナミハダニは0.89m/hr,ミカンハダニはミカン新葉の裏面で1.5m/hrであった。これらの観察を通じて,両種のハダニが静止した面から歩行中にたびたび落下し,糸で懸垂する現象が観察された。
2) ハダニの吐糸と歩行活動は両種ともに高い相関を示し,特に葉面では1対1に近い対応関係となり,両種のハダニの雌成虫は歩行時にほぼ常に吐糸することが示された。
3) 糸の量的な扱い方,糸による歩行活動量の間接的評価の可能性等について考察を行なった。