日本応用動物昆虫学会誌
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ツルグレンファネルによる貯穀害虫の抽出
井村 治
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1979 年 23 巻 3 号 p. 134-140

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抄録

自作のツルグレンファネルを用い,精麦所における貯穀害虫の調査に適用するための条件とその抽出効率を検討し,サンプル中の個体数の推定も試みた。
真ちゅう製のふるいと,ガラス漏斗を組み合わせ,熱源として100wかさ付電球を用いた。モデル試料としてフィード100gと小麦粉100gの混合したものを用いた。
できるだけ抽出時間を短縮し,抽出効率を上げるために,熱源を時間とともに試料に近づける方法を用いた。
精麦所で多く発見される8種の昆虫(スジコナマダラメイガ幼虫,ヒラタコクヌストモドキとコクヌストモドキの幼虫と成虫,ココクゾウ,コクゾウ,コナナガシンクイ,ノコギリヒラタムシ,コメノコクヌストモドキの成虫)をこの装置で抽出したところ,スジコナマダラメイガ1, 2令幼虫とノコギリヒラタムシ成虫を除けば,高い抽出率が得られた。
得られた抽出率を用いて精麦所で採集したサンプルの中の昆虫の個体数を推定した。
抽出率に対するサンプル中の昆虫の密度の影響をコクヌストモドキ成虫を用いて調べた結果,密度が高くなるにつれて抽出率が高くなる傾向が示された。
複数の種を試料に混合した場合と単一種の場合の抽出率を比較したところ,複数種混合区において,ヒラタコクヌストモドキの成虫と幼虫およびノコギリヒラタムシの成虫の抽出率が有意に高くなった。
ツルグレンファネルを用いて貯穀害虫の密度推定を行う場合の制約について論じた。

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