日本応用動物昆虫学会誌
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免疫血清学的手法によるコナガの捕食性天敵の調査
I. 沈降反応,とくにMicro-Ouchterlony法の検討
根本 久関島 安隆藤倉 由利子桐谷 圭治渋川 三郎
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1985 年 29 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

コナガの捕食性天敵を調査する目的で抗コナガ血清を作成し,その特性および力価を重層法,MO法,ES法およびIEP法によって調査し,あわせてそれらの手法が適用できるのか否かを検討した。
1) 作成された抗血清中にはコナガ幼虫の体成分の他に,コナガの餌に対する抗体が生じていた。餌に対する抗体を吸収した抗コナガ血清(Px.-1)はコナガ幼虫の体成分だけに対する抗体を含む特異的な血清であると考えられた。
2) 抗コナガ血清と通常キャベツ畑に生息している食植性昆虫および捕食性節足動物の抗原液とは交差反応を引き起こさなかった。
3) MO法およびES法によって調べたコナガの体成分(抗原液)に対する抗コナガ血清の力価(抗原価)は,抗原液の最高1,280倍希釈まで沈降反応が認められ,それらの感度は重層法よりもいく分低いものの,そこには必ずしも有意な差があるとはいえなかった。
4) MO法の場合,作製した抗コナガ血清は3∼4齢幼虫,蛹および成虫などの各1個体量の抗原液と沈降反応が認められるが,卵および1, 2齢幼虫の各1個体量の抗原液とは反応が認められなかった。この原因は,1∼2齢の抗原量が不足していることにあると考えられた。
5) 継続的にコナガの捕食性天敵を,沈降反応を利用して調査する場合,血清の使用量が少なく,一度に多数の検体を検査できるMO法が最も適当であると思われた。

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