日本応用動物昆虫学会誌
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イネカラバエの生態の地方的変異に関する研究
I. 2化地帯で経過した2化・3化地帯イネカラバエの生態的性質の違い
平尾 重太郎
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1959 年 3 巻 2 号 p. 107-114_1

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抄録

イネカラバエには2化と3化の発生地帯がある。本報では1958年に3化地帯産(鳥取産・新潟産)のイネカラバエの幼虫を2化地帯(秋田)で経過させ,2化地帯幼虫との生態的性質の違いを検討した結果を記述した。
1) 第1化期成虫の羽化は,3化地帯産で早く,2化地帯産で遅く,その差は約25日あった。
2) 2化地帯産の幼虫は稲の幼穂を摂食した後に蛹化するため,同一栽培条件の稲にはどんな時期に食入しても蛹化期がほぼ一定しており,出穂後に蛹化する。したがって,幼虫期間は幼苗に食入すれば長く,生育後期に食入すれば短かった。一方,3化地帯産の幼虫の発育は幼穂の摂食とは関係なく行われ,食入後ほぼ一定期間を経れば蛹化するようである。
3) 6月から8月までの3ヵ月間に,3化地帯産のものは2世代を,2化地帯産のものは1世代を経過した。
4) 両地帯の材料とも稲を寄主として人為的に接種すると,9月上旬から10月中旬にかけて幼虫が発育を完了し,越冬までに中間世代が存在した。この世代では2化地帯の幼虫も幼穂の摂食には関係なく蛹化した。
5) 幼虫の加害による傷痕を4つの型に類別し,更に傷葉型の発生様式を3化地帯の1化期型と2化地帯型に分けた。
6) 両地帯成虫の交雑で得られた第1代幼虫の発育期間は,どんな雌雄の組み合わせでも2化地帯のものと同じであった。しかし,稲の加害様式は雌雄の組み合わせにより若干異なった。
7) 2化地帯で経過した3化地帯産幼虫の生態は原産地のそれと全く同様で,発育環境が異なっても3化地帯幼虫がもつ本来の性質は失われなかった。しかし,これが一時的な現象であるか遺伝的なものであるかは明らかではない。

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