日本応用動物昆虫学会誌
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家蚕における脂肪組織とその主な含有成分の量的変化について
重松 孟竹下 弘夫
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1959 年 3 巻 2 号 p. 123-127

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抄録

家蚕の発育,特に変態に伴う脂肪組織の定量的変化を,その乾物重および含有成分について調べた。組織の成長を腹部脂肪組織の乾物重の変化で表わすと,1頭あたりの組織乾物重は5令起蚕から化蛹前までの間に著しく増加し,雌は22倍,雄は20倍になるが,化蛹後は減少していく。雌雄間の差は吐糸開始以後顕著となり,雌のほうが大である。虫体重あたりの乾物重の変化をみると,その値は5令中期以降,化蛹前までの間急速に増加し,その最高値を5令起蚕の値と比較すると,雌は23倍,雄は17倍になる。腹部を第7と第8関節を境にして前部と後部に分け,それぞれの組織量の変化をみると,両部分とも同じ変化の型を示すが,吐糸期に現われる雌雄の差は後部のほうが大きい。
虫体1頭あたりの組織に含まれる3成分の量を測定すると,5令起蚕では3成分とも2∼5mgで少量であるが,脂質は急速に増量して吐糸終了のころに最高値,約95mgに達する。グリコーゲンは5令中期に増加し始め,熟蚕期,吐糸開始のころ最高値25mgとなり,以後減少する。タンパク質は特徴的な変化を示し,5令中期まで増加した値は以後熟蚕までほぼ一定値約20mgに保たれ,吐糸期に急速に増量し約43mgになる。
脂質,タンパク質,グリコーゲンの含有量の乾物量に対する比率の変化を調べると,脂質は発育中50∼65%を占め,その変化の様相はグリコーゲンと同じでいずれも熟蚕期に最高値を示すが,グリコーゲンは3∼20%を占める。タンパク質は5令期前半および蛹期には35∼40%であるが,熟蚕期を中心として上記2成分と逆の変化を示し,熟蚕期ころは約13%の値である。

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