日本応用動物昆虫学会誌
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コカクモンハマキの栄養と代謝に関する研究
I. 合成飼料による幼虫の無菌的飼育
玉木 佳男
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1959 年 3 巻 4 号 p. 286-290

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抄録

こん虫の栄養要求,あるいは一般代謝機構を究明するにあたって,そのこん虫の合成飼料による無菌的飼育法の確立は,一つの必要な課題であると考えられる。しかし食植性のこん虫については,現在までのところわずかな種類で成功しているにすぎない。
筆者は茶樹害虫の一種であるコカクモンハマキについて合成飼料を使用した無菌飼育に成功し,更に若干の興味ある結果を得たので報告する。
基礎飼料は第1表に示したとおりである。これに第2表の処方にしたがって乾燥酵母,および乾燥茶葉粉末を加え殺菌した。これらの合成飼料に殺菌した卵塊を接種し,ふ化幼虫の生育ならびに成虫の羽化に及ぼす影響を調べた。
基礎飼料に乾燥酵母のみを25.4%添加した場合,幼虫の生育は対照区(殺菌茶葉)に比べて同等または若干すぐれていたが,乾燥酵母25.4%のうち0.9%∼12.7%を茶葉粉末でおきかえると幼虫の生育は更に著しく促進された。乾燥酵母含量が4.2%以下では生育は著しく劣っていた(第3表および第1図)。
成虫の羽化についてみると,酵母含量21.2%以上,茶葉粉末4.2%以下ではほとんどのさなぎが羽化不能であり,茶葉粉末8.5%以上で正常な羽化が行なわれた(第4表および第1図)。第5表にみられるとおり,この羽化促進効果は茶葉粉末に起因するものであり,その最適含量は飼料乾物中の10%以上であると考えられる。

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