日本応用動物昆虫学会誌
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ツゲノメイガの生活史に関する研究
I. 成虫の発生時期と発育速度
丸山 威真梶 徳純
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1987 年 31 巻 3 号 p. 226-232

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抄録

ツゲノメイガGlyphodes perspectalis (WALKER)の生活史を解明するため,野外における成虫の発生時期と,発育期間に及ぼす温度の影響を調査した。
1) 生育地の異なる個体群の越冬世代成虫の羽化時期は,年次による変動はあるものの,高知,東京・千葉,宮城の順に羽化が遅くなり,地理的傾斜が認められた。
2) 東京・千葉個体群は年3化であり,その羽化時期は,越冬世代成虫が5月中旬∼6月下旬,第1世代成虫が7月下旬∼8月下旬,第2世代成虫は8月下旬∼9月中旬であった。
3) 夏世代の発育零点は,卵期が11.6°C,幼虫期が10.1°C,蛹期が12.0°C,産卵前期が8.1°Cとなり,有効積算温度は,卵期が55.0日度,幼虫期が365.0日度,蛹期が128.9日度,産卵前期が38.5日度となった。また,1世代を完了するには,発育零点を10.5°Cとした場合,おおよそ610∼620日度が必要とされた。
4) 休眠覚醒後の越冬世代の発育零点は,幼虫期が10.1°C,蛹期が10.9C°となり,有効積算温度は,幼虫期が238.1日度,蛹期が142.0日度となった。また,越冬世代成虫が羽化するには,発育零点を11.0°Cとした場合,おおよそ350日度が必要とされた。
5) 以上の結果から求められた有効温量を用い,東京・千葉個体群の各世代の50%羽化日を日平均気温から求めたところ,野外における観察結果とほぼ一致した。

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