日本応用動物昆虫学会誌
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ディコホル感受性および抵抗性ナミハダニの増殖能力
河野 哲
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1987 年 31 巻 4 号 p. 333-338

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抄録

ナミハダニのディコホル感受性および抵抗性系統の増殖能力について,インゲン葉を用いたリーフディスク法により20°C, 25°C, 30°Cの温度条件下で検討した。
1) 両系統間の生存率については,25°C, 30°Cの条件下では感受性系統のほうが高い傾向を示した。また,産卵数については,25°C, 30°Cで感受性系統のほうが多いようにみうけられたが,有意な差ではなかった。
2) 未孵化率は各温度とも感受性系統のほうが抵抗性系統よりやや低い傾向を示した。
3) 卵から成虫に発育するまでの日数は,各温度ともわずかに感受性系統のほうが抵抗性系統より短かった。
4) 第1世代および第2世代の成虫化率は,感受性系統のほうが抵抗性系統よりいくぶん高く,雌当り平均産卵数も25°Cでは感受性系統がやや多かった。
5) 内的自然増加率(rm)は,両系統とも30°C>25°C>20°Cの順に小さくなり,いずれの温度でも感受性系統が抵抗性系統より高かった。
6) 以上の結果から,ディコホル抵抗性個体は,薬剤淘汰圧のない条件下では感受性個体に比べて増殖能力が劣り,このこととディコホル抵抗性の遺伝様式とが関係して,ナミハダニ個体群のディコホル抵抗性レベルは徐徐に低下し,感受性への復元が期待される。

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