日本応用動物昆虫学会誌
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昆虫病原性糸状菌Paecilomyces fumosoroseusのblastosporeの性状
清水 進鮎沢 啓夫
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1988 年 32 巻 3 号 p. 182-186

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抄録

昆虫病原性糸状菌である赤きょう病菌Paecilomyces fumosoroseusのblastosporeの性状について分生子と比較検討した。乾燥状態での保存および水中保存のいずれの場合もblastosporeは分生子よりも不安定であった。各種消毒剤(昇汞水,石炭酸,クレゾール石けん液)に対する感受性試験ではblastosporeと分生子の間に有意差が認められなかった。紫外線処理および高温処理に対する分生子およびblastosporeの感受性は同程度であったが,超音波処理に対してblastosporeは分生子より感受性であった。カイコ幼虫に対するblastosporeおよび分生子のLD50(菌数/1頭)値はそれぞれ4.5および2.4×102で,blastosporeが分生子よりも約50倍強い病原力を示した。しかし,塗布接種では両者の病原力の間には有意差が認められなかった。blastosporeまたは分生子をカイコ幼虫に注射した場合,blastospore注射区における菌数の増加は分生子注射区のそれより早かった。抗分生子血清の凝集素価は分生子に対して10倍以下,blastosporeに対して320倍であった。抗分生子血清は破砕分生子抗原に対して高い凝集素価を示すので,分生子の表層は抗原性の低い物質で構成され,その内部にはblastosporeの表層との共通抗原が存在するものと考えられる。

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