日本応用動物昆虫学会誌
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イタヤカエデに寄生するオオカエデハダニの生活環
後藤 哲雄
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1988 年 32 巻 3 号 p. 219-223

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抄録

イタヤカエデに寄生するオオカエデハダニの生活環を札幌において調査した。
1) 本種はイタヤカエデの奇形葉の葉裏にある凹部分にのみ層状網を張って生活していた。ハダニは越冬前に奇形葉から平滑な葉に移り,そこにオニグモ類の子グモで知られている団居に似た集合を形成したのち,越冬場所である樹皮内に移動した。
2) 越冬雌は5月上旬に出現し,10月中旬から11月上旬の間に活動を終了した。これはイタヤカエデの展葉・落葉時期によく対応していた。この活動期間中に3∼4世代を経過したと推定された。
3) ハダニの個体数は5月下旬にピークに達し,7月に急減したのち,9月中旬に再び増加した。5月のピークは越冬雌の産卵に起因し,7月の減少は出現した成虫の分散によると考えられた。9月の個体数の増加は越冬に伴うハダニの集合行動に起因していると考えられた。
4) 18°Cにおける休眠誘起の臨界日長は14.5hrであった。野外の休眠誘起時期は9月上旬であり,臨界日長で予測される時期と一致していた。
5) 本種の未交尾雌が10日間に産下した卵数は,交尾雌の約1/3であり,発育した成虫はすべて雄であった。一方,交尾雌の産下した卵から発育した成虫の90%は雌であり,性比に著しい偏りがみられた。

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