日本応用動物昆虫学会誌
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フェンバレレート光学異性体の作用機構に関する研究
I. チャバネゴキブリにおける体内分布と神経組織への透過性
永田 啓一斎藤 哲夫宮田 正
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1989 年 33 巻 4 号 p. 180-186

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抄録
チャバネゴキブリBlattella germanicaの雄成虫を用いてフェンバレレートの二つの光学異性体14C α-racemicフェンバレレートおよび14C β-racemicフェンバレレートの体内分布と神経組織への透過性を調べた。
体内分布について14C α-racemicフェンバレレートと14C β-racemicフェンバレレートを等薬量局所施用し一定時間後頭部,血リンパ,神経索,脂肪体および消化管の各組織を摘出し薬量を調べたところ,血リンパについては3時間まで,頭部については6時間まで14C α-racemicフェンバレレートが14C β-racemicフェンバレレートより多く存在した。神経索,脂肪体および消化管においては光学異性体間で明らかな違いは見られなかった。
摘出神経索を用いて各薬剤の侵入を調べたところ明らかな差が見られ,14C α-racemicフェンバレレートは14C β-racemicフェンバレレートよりも多くまた時定数を比較したところ14C α-racemicフェンバレレートは14C β-racemicフェンバレレートよりも速やかに侵入した。
以上の結果は14C α-racemicフェンバレレートと14C β-racemicフェンバレレートの間でチャバネゴキブリについて薬剤動力学的な違いがあることを示したが,この二つの光学異性体間の示す殺虫活性の差の違いを説明する主要な要因である可能性は低いと考えられる。
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