日本応用動物昆虫学会誌
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ワタアブラムシAphis gossypii GLOVERの薬剤抵抗性
I. 静岡県における薬剤感受性低下の実態とエステラーゼ活性
西東 力
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1989 年 33 巻 4 号 p. 204-210

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抄録

静岡県におけるワタアブラムシの薬剤感受性低下の実態を明らかにするため,各種の植物から採集した個体群について薬剤感受性の検定を実施し,あわせて個体別のエステラーゼ活性を測定した。
1) 有機リン剤(dichlorvos, malathion),カーバメート剤(carbaryl),合成ピレスロイド混合剤(fenvalerate・malathion)のうち,合成ピレスロイド混合剤に対する感受性低下はほとんどみられなかったが,有機リン剤に対しては顕著な感受性低下が認められた。
2) Dichlorvosの抵抗性比は最大でも30倍強にとどまったのに対し,malathionのそれでは100倍に達する個体群も認められ,有機リン剤のなかでも薬剤の種類によって抵抗性の発達程度が異なった。
3) 有機リン剤に対する感受性低下の程度は,ウリ科作物,キク,イチゴから採集した個体群で大きく,ナス科作物,ムクゲ,ツルウメモドキから採集した個体群では小さい傾向がみられたが,感受性低下の程度と殺虫剤の使用回数には明確な関連が認められなかった。
4) エステラーゼ活性の個体頻度分布は寄主植物によって大きく異なり,ウリ科作物,キクおよびイチゴでは高活性個体の頻度が高く,ナス科作物,ムクゲ,ツルウメモドキでは低活性個体の頻度が高かった。
5) 薬剤感受性の検定およびエステラーゼ活性の測定結果から,本虫の薬剤抵抗性には寄主植物との関連が示唆された。
6) DichlorvosあるいはmalathionのLC50値は個体別に測定したエステラーゼ活性の平均値と正の相関を示した。

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