日本応用動物昆虫学会誌
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カイコガ雌膠質腺の発達とタンパク質合成
有沢 宣幸普後 一
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1990 年 34 巻 3 号 p. 227-235

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抄録

カイコガ雌膠質腺の湿重量,タンパク質そして核酸含量の経日的変化を調べた。カイコガ膠質腺は化蛹5日頃にほぼ形態的に完成し,その構造は基部側に幹状部,その先端側に樹枝状の形態をした枝状部から成る。膠質腺の湿重量は化蛹5日から羽化当日まで直線的に増加したが,羽化後は急激に減少した。タンパク質量は湿重量の変化と並行して変動した。湿重量に占めるタンパク質量は全齢を通じほぼ定常で4∼6%であった。RNA含量は化蛹6日から上昇し,羽化当日にピークをもつ山形を示した。この変動は膠質腺全RNA量の約90%を占める枝状部のRNA含量の変動と一致したが,幹状部では変動は見られなかった。膠質腺DNAの含量は,形態形成を終えた以降では枝状部,幹状部ともに定常値をとり続けた。膠質腺タンパク質の合成部位を明らかにする目的で培養条件下アミノ酸の取込み実験を行った。その結果,タンパク質分画への14C-U-ロイシンの取込みは枝状部で高く,幹状部では低かった。これらのことから,枝状部は膠質腺分泌タンパク質の合成をしており,幹状部は分泌タンパク質の蓄積場所であることが確認された。SDS-PAGEによる分析から,膠質腺タンパク質は分子量300kd付近にみられるタンパク質を主成分として,この他にすくなくとも25∼35もの成分からなることものと推定された。

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