有機リン剤抵抗性のイエバエに対して相乗作用をもたらす薬剤の組合せを殺虫試験のレベルで探索した。その結果,ダイアジノンとカルボフランの組合せはきわめて高い相乗作用を示し,相乗作用の最も大きくなる混合比はLD50の比に等しかった。一方,ダイアゾクソンとカルボフランの組合せでは相乗作用が認められなかった。またカルボフランはダイアゾクソンの解毒には影響しなかったので,ダイアゾクソンの解毒はダイアジノンとカルボフランの相乗作用のメカニズムには関与していないことを示唆した。これとは逆にダイアジノンとカルボフランの混合液を注射投与したところ,ダイアジノンはLD50(注射投与)以下の薬量でカルボフランの解毒を阻害し,カルボフラン消失の1次速度定数は3.4倍低下した。さらにin vivoにおいてダイアジノンとカルボフランの混合液の処理によって阻害されたAChEの脱アシル化速度と,in vitroにおいてダイアゾクソンまたはカルボフランによって阻害されたAChEの脱アシル化速度を比較した結果,in vivoにおけるAChEの阻害のほとんどはカルボフランによって起こっていることが示された。したがって,この相乗作用の機構は,ダイアジノンがそれ自体では毒性を発揮しないような薬量でカルボフランの解毒を阻害した結果,カルボフランの体内濃度が増加しAChEの阻害力を高めたことによることが明らかとなった。