1993 年 37 巻 3 号 p. 137-144
イネの有機栽培がウンカ・ヨコバイ類の個体群密度に与える影響を明らかにするために,岡山県立農業試験場の化学肥料区,有機肥料区,無肥料区および岡山市の有機栽培田で発生密度の調査を行った。
1) 有機栽培田ではツマグロヨコバイの密度が各世代とも極めて低かった。このことは,有機栽培田が乾田直播地帯にあり,冬期の耕起のためツマグロヨコバイの侵入世代密度が地域的に低かったことによると考えられた。
2) 有機栽培田におけるセジロウンカの侵入世代密度は他の区と同程度であったが,その後の増殖率は著しく低く,第1世代幼虫期以降の密度は他の区に比べ著しく低くなった。
3) トビイロウンカ第3世代幼虫の密度は有機栽培田で最も低かった。このことは侵入世代成虫の密度が有機栽培田で低かったことに起因すると推測された。
4) 天敵類の密度は有機栽培田で特に高い傾向は認められなかったことから,ウンカ類の密度が有機栽培田で最も低くなった原因は天敵以外の要因によると示唆された。