1993 年 37 巻 3 号 p. 169-174
チャバネアオカメムシ成虫から鞭毛虫が分離された。この鞭毛虫は紡錘形を呈し,核の前部のキネトプラストから波動膜を伴った鞭毛が伸びており,トリパノゾーマ科の鞭毛虫のepimastigoteの形態を示すことからBlastocrithidia属の鞭毛虫と同定された。本鞭毛虫は宿主消化管内でepimastigote態で増殖した。epimastigoteは2分裂によって増殖し,個体密度の上昇にしたがってロゼット状のクラスターを形成し,クラスター内でepimastigoteは融合しcyst化した。cystは経口的に感染するが感染成虫の排泄物中にcystが含まれており,感染成虫の産下する卵の表面のcystによる汚染が主要な感染経路と考えられた。