1996 年 40 巻 1 号 p. 55-59
カンザワハダニTetranychus kanzawai KISHIDAのブドウ5品種における発育と産卵,並びに殺虫剤散布(permcthrimとcarbarylをそれぞれ2回)を行った4品種における露地での発生消長を比較した。ふ化幼虫の発育率はマスカット・ベーリーA,デラウエアで高く,80%以上が成虫に発育した。巨峰では約1/4が成虫に発育した。ネオ・マスカットとマスカット・オブ・アレキサンドリアではほとんどが幼虫期に死亡もしくは供試葉から逃亡した。成虫に発育した個体の産卵数はマスカット・ベーリーAと巨峰で多く,デラウエアでやや少ない傾向を示したが,巨峰とデラウエア間では有意差が認められなかった。露地栽培ブドウでの寄生密度は品種と薬剤散布の有無によって大きく異なっていた。調査終了までの累積寄生密度はマスカット・ベーリーA>デラウエア=巨峰>キャンベル・アーリー>ネオ・マスカットの順に発生が多かった。このうちネオ・マスカットではハダニがほとんど増殖しなかった。殺虫剤無散布区ではいずれの品種でも発生が少なく,寄生数は1葉当たり平均3個体を越えることはなかった。殺虫剤散布区と無散布区間の天敵類の発生量や消長の差はほとんど認められなかった。