茶樹に寄生するツノロウムシ,Ceroplastes pseudoceriferus (GREEN)の虫体被覆物中にとりこまれているhoneydew中の炭水化物構成をペーパークロマトグラフィーによって定性的に調べ,茶樹樹皮中に見られるそれらと比較検討した。
honeydew中の炭水化物としてはグルコース,マルトース,スタキオース,リビトール,およびマンニトールを検出し,このうち糖アルコールであるリビトールとマンニトールは結晶として分離同定した。honeydew中のこれら炭水化物は茶樹の系統によって検出される程度が異なり,6種の茶樹系統から採集したツノロウムシ27個体について調べたところこれらの検出ひん度は,リビトール>グルコース>マルトース=ラフィノース>スタキオースの順であった。
茶樹樹皮中からは7種の炭水化物を検出しそれらの相対的な濃度は,シュクロース>グルコース>フラクトース=ラフィノース>マルトース=スタキオース>リビトールの順であると考えられた。
これらの結果からツノロウムシは食物中のフラクトースおよびシュクロースをほとんど完全に利用しており,またその他の糖もある程度利用していると考えられる。糖アルコールについては,リビトールに関する限り,この虫は食物中のリビトールをそのままの形で排泄しているのではないかと考えられる。
Honeydew中の還元糖をSOMOGYIの比色法で定量したところ,乾物当り2.8%であり,この値はアブラムシ類のhoneydewについて調べられている値と比して約1/10であった。この事実はツノロウムシが大量のろう質物を分泌する事実と考え合せると,ツノロウムシのろう質物が,食物中の糖類から由来しているのではないかとの考えを起こさしめる。