8 巻 (1964) 3 号 p. 245-250
ネコブセンチュウの生育と寄主作物の生育との関係については数多くの報告がされてきたが,未だ一致した結論を得るには至っておらず,さらに繁殖力については何ら見るべき知見は得られていないようである。これらの報告の中でBIRD (1960)は,要素欠乏の寄主作物に寄生したネコブ線虫はより早く生育することを報告した。筆者らは本線虫の繁殖様式に関する一連の研究として寄主作物の生育が線虫の繁殖力にどのように影響するかを観察し,線虫の生育についてはBIRDの結論とほぼ一致したがOTEIFA (1951∼1953)の提言したカリの重要性については,一致した傾向を見出せず,寄主作物によって線虫の生育を支配する要素(植物が摂取するもの)は異なることが暗示された。実験の概要は次の通りである。
(1)寄主作物としてキウリ,トマト,サツマイモを用い,線虫を侵入させてのち,寄主作物を窒素燐酸カリの各種要素欠乏の水耕に移した場合。(2)線虫接種前から寄主作物を要素欠乏症状にし,接種後も引続いて要素欠乏で水耕したものにつき,それぞれ線虫の繁殖状態を卵のう蔵卵数,雌成虫の生理的食塩水内産卵等について検討した。
(1), (2)の実験とも,要素欠乏の作物に寄生した線虫は対照(全要素)よりも早く成熟し,より早く産卵を始めた。すなわち接種後45日目において卵のう蔵卵数は対照よりも多く,その雌成虫の液内産卵数は全般的に対照よりも少なかった。両者の和は傾向として対照のそれよりも大であったため,さらに(2)の実験をサツマイモについて繰り返し,15日おきに採集して,繁殖ばかりでなく線虫の生育をもカメラルシダによって追跡した。この実験の結果も同様に窒素欠乏,燐酸欠乏の区では線虫の生育は早く,また産卵も早く始めたが,以後日数が経るにつれ対照区の線虫が大になり,45日目では対照区が最も生育は大であった。(1), (2)の実験を通じて繁殖力は全般的にみて要素欠乏区が大であった。要素欠乏の作物の根には着色硬化した卵嚢の着性が多かったが,その傾向は窒素欠乏のキウリ,トマトにおいて著しかった。