日本応用動物昆虫学会誌
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家蚕における集合性行動の研究
第3報 行動型の解析および個体間の相互関係について
奥井 一満
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1964 年 8 巻 4 号 p. 286-294

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抄録

1. 家蚕の集合性の行動を観察した結果,1時間内外で安定した集合状態になることがわかった。その過程は初期,中期,終期の三期に大別できる。
2. 初期は2個体の接近と個体間の確認,中期はより大きな群に発展する時期,終期で群は安定,静止状態に入る。
3. 行動の型は30分前後を境にして異り,前半は積極的に移動し動きは活発,後半は逆になる。
4. この間の個体相互の接近接触の型は,正向位,追行位,横向位,交叉,同方向体位,逆方向体位,後向体位の7型に分けられ,前3型は初期,交叉は中期,後3型は終期に多く見られる。
5. 絶食させた個体にも集合性は存在するが,行動のリズムがやや異なる。正常個体に対してはっきりした反応を示す点から,互いに引きつけ合うのが,摂食に関連したものであることがうかがえる。
6. 接触群は無制限には拡がらず,4∼6個体の集団が最も多く見られる。
7. 以上の点から家蚕の集合性行動は,摂食,休止という家蚕の生活リズムに附随して現われるもので,生存上の適応行動であると考えられる。

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