9 巻 (1965) 3 号 p. 151-161
1. ヨトウガの卵個体群の動態について,京都市で1955年に,そして弘前市で1958, 1959および1963年に,主としてキャベツ畑で調査した。
2. 卵塊サイズについて,他者の研究報告なども参照して検討した結果,本邦内の地方別には北方ほど小さく(ただし京都市以北の地方間での比較),また世代別(各地で通常は2世代経過)には第1世代の方が小さいことが知られた。弘前市での両世代間の卵塊の平均サイズの比は約1:4であった。
3. 42の調査畑の例で,産卵を見なかったのは2例であり,株当たり平均産卵数は1963年の第1世代には非常に多くて殆んどの畑で100卵をこえ,はなはだしい畑では800卵近くも産下されたが,その他の調査年には両世代ともに多い畑でも40卵程度であった。
4. 一つの発生地域内での畑間の産卵数の差は,産卵数が少ない場合には小さいが,1963年の第1世代のように非常に多い場合には特に多く産下される若干の畑があり,したがってその場合の畑単位の産卵分布は斑状であった。
5. キャベツ畑内での株当たり産下卵塊の分布は,産卵期間が長くて産卵数が多い畑では終始機会的もしくは一様だが,遅れて産卵が始まり産卵数が少ない畑では,初めは集中的で後期には機会的もしくは一様となった。
6. キャベツ畑が産卵場所としてあまり好ましくない状態だと思われる時には,その畑の周辺などに自生するアカザ上に産卵された。そして卵塊サイズはアカザ上に産下された方が大きかった。つまりこれらの2植物間の比較では,幼虫にとって好適な食草(例えば平田,1960)の方に大卵塊が産下されたことになる。
7. 卵期間は,第1世代では早く産下されたものから遅く産下されたものへと順に2週間→5日というように変わったが,第2世代では逆に遅く産下されたものほど長くなった(6卵塊について5日→9日)。このような各時期の卵期間の相違は気温の時間的変化と関係していると思われた。
8. 両世代ともに産下卵塊の約22%は消失した。特に遅く産下されたものほど消失率が高く,また先に発生した本種の幼虫が存在する株で高かった。
9. 2種の卵寄生蜂,Trichogramma fasciatumとT. sp.とが知られているが,それらの活動は本種の第2世代の産下卵に対してのようであった。
10. 以上の諸結果から,本種の大発生,あるいはそれに伴う幼虫個体群の群移動などが起こりやすいような卵個体群の形成条件などについて若干考察した。